重箱の隅

好きなことだけ。

Blue is A Far Way Color

 

6月4日。

東京国際フォーラムホールA。

秦基博『青の光景』ツアーファイナル。

 

アルバムとツアー全般に関する内容については

どれほど言葉を尽くしても

伝えきれないので

ネット上に掲載されている

素晴らしい記事にお任せして

(URLは記事の最後に)

 

わたしがここに残せるのは

不完全な写真と 大好きな詩に託した

ささやかな 記憶のかけら。

 

 

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・・・・

待ちに待った3年ぶりのアルバムツアー、

ファイナルのステージを見届けた座席は

 

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2階席の後方から2列目 ステージほぼ正面。

 

幸運をお裾分けしてくれた優しい友人の隣で

念のために持参した双眼鏡を膝に

言葉少なに待ちわびる 開演の時。

 

午後6時。

客電がゆっくりと落ちて、

会場中から拍手と歓声がわき起こる。

 

アルバムと同様に

ライブのオープニングを飾ったナンバーは

 

『嘘』。

 

どこまでが本当で 

どこからがフィクションか・・・

 

シンガーソングライターという複雑な存在を

表現するに相応しいフレーズが

静かに ホールを満たしていく。

 

”メッキの言葉を並べ立てて 
 本当のことをうやむやにした
 お願いだ 今だけは

 せめて 嘘をつかないでくれ”

 

アルバムのコンセプトカラーである

悲哀を帯びた青い光の中で

 

アコギ弾きのシンガーソングライターが

ステージで最初に手にしたのは 

意外なことに

カスタムモデルのテレキャスター

KAMINARI SUNRISE】。

 

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印象的なシーケンス・フレーズを自ら奏でながら

循環する4つのコードと

8分音符を連ねたメロディにとじこめた

ぽつりぽつりと降る雨粒のような

憂いに彩られた 行き止まりの物思い。

 

”君さえ信じてくれればいい

 そうすれば真実になるだろ
 お願いだ この僕の全部が
 たとえ まがいものでも”

 

”嘘”と”本当”が

歪みの強い ディレイのかかった音色と

青みがかった光の中で交差する。

 

”嘘ついたくせに 嘘ついて

 嘘をごまかしてばかりで”

 

傷つけて 傷ついて

傷を舐め合うなんて

 

”終わりに しようよ

 僕たちだけでも 指切りしよう”

 

曲の最後を飾るのは

少しづつ色合いを変えて響き渡る

ロングトーンのリフレイン。

 

”永遠”――

 

1コーラス目では4回、

2コーラス目では8回。

 

メロディにマイナーチェンジを加えて

同じ言葉を重ねれば重ねるほど

 

もどかしさと切実さに

諦めにも自虐にも似た

悲哀の色が忍び込む

 

どれほど願っても 

たとえ 誓い合っても

きっと 手に入らない・・・

 

「真実」と「永遠」は

 

まるで

 

「青」のようだ。

 

 

 

 

”どんなに深く憧れ、

どんなに強く求めても、

青を手にすることはできない。

すくえば海は淡く濁った塩水に変わり、

近づけば空はどこまでも透き通る。

人魂もまた青く燃え上がるのではなかったか。

青は遠い色。”

谷川俊太郎 「青」)

 

 

 

わかっていても

それでも手を伸ばさずにはいられない。

求めずにはいられない。

 

”はじめて みようよ
 僕たちだけでも 指切りしよう”

 

どれほど あやふやな 約束でも

たどり着いた先に 哀しみしかなくても。

 

そして 

オーディエンスである私たちも

「青」が描きだす世界に 深く迷い込む。

 

この声と 音と 言葉に導かれながら

心を委ねて どこまでも。

 

 

 

 

3ヶ月にも及ぶツアーのセットリストは、 

オープニングの『嘘』から

アンコールの『僕らをつなぐもの』まで

アルバム『青の光景』を中心に選ばれた全21曲。

(変更は、『季節が笑う』⇔『休日』のみ)

 

 

時に深く 時に淡く 

悲しく そして 爽やかに

様々な青と声のグラデーションに

染め上げられた ステージで

 

中でも

息を呑むほどに美しかったのは

セットリストの中盤の

水彩の月』。

 

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(撮影:河本悠貴氏)

 

 

深く 静かな青に浮かぶ

淡く滲んだ 水彩の月。

真っ直ぐに届く 切ない声と

優しいギターの音色。

 

すべてが あまりにも美しくて

せめてこのときばかりは、と

膝の上の双眼鏡に手をのばした。

 

 

まるい視界に浮かんでいたのは

青い光と音の粒をとじこめた

まるで 季節外れのスノードーム。

 

 

そんな自分だけの青の光景を

忘れたくなくて、形に残したくて

帰宅後、すぐに写真を撮った。

 

 

 

 

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↓実写ではこんな感じ

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(撮影:河本悠貴氏)

 

 

 

 

「青」の詩に続きがあると知ったのは

それから3日後のこと。

 

 

”漠としてかすむ遠景へと歩みいり、

形見として持ち帰ることのできるのは、

おそらく一茎のわすれなぐさだけ、

だがそれをみつめて人は、

忘れてはならぬものすら忘れ果てる。

おのがからだのうちにひそむ、

とこしえの青ゆえに。”

谷川俊太郎 「色の息遣い 青」)

 

 

あの日私が「持ち帰」った光景は

まぎれもなく

 

”一茎のわすれなぐさ ”

 

決して手の届かない 

無限に続く青の 「形見」。

 

 

そして 詩が語るように

私もきっと 忘れてしまうに違いない。

様々な情感を描く青のグラデーションも

心に染み渡った音色の素晴らしさも

けして届かない 永遠の青のことも。

 

だから なおのこと、

細工を重ねて撮ったあの写真は 

形見とすら言いがたい。

 

わすれな草(=記憶)の 中途半端な複製は 

無残に押しつぶされた 押し花のようなものだから

 

 

”おのがからだのうちにひそむ、

とこしえの青ゆえに。”

 

 

からだのうちにひそむという

透明に近い”とこしえの青”(AO)はもちろん

心と名前にも 様々な青(AO)を刻む彼ならば

 

 

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切なさも 悲哀も 抱えたままで

「わすれる」ことすら 飄々と

受け入れてしまうかもしれない。

 

とこしえの青にも

かりそめの青にも 

囚われることなく

 

新しい音と色で描く 

次の一歩のために。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

そんな秦さんが描く次の一歩。

すでに青写真(!)は出来ているようだ。

 

ファイナルのアンコールで発表された

自身初の

デビュー10周年記念のアリーナツアー。

 

 

コンサートの始まりに

 『嘘』でかわした

心もとない”指切り”は

 

様々な青の光景をめぐる旅の終りには

 

何よりも確かな 

再会の約束に 変わっていた。

 

 

会場を埋め尽くす”笑顔”と 

”ハナウタ”で口ずさむメロディ

 

”こうして触れる 指先の温もりだけ

それだけで 僕らは 

つながってるわけじゃない”

(アンコール:『僕らをつなぐもの』)

 

 

そんなことを思い出していたら

 

秦さん自身が『嘘』を彩った

 

歪みの強い あの音色の

 

”形見”が

 

どうしても欲しくなった。

 

 

みんなで踊った「スミレ」でも

高く大きく育った「ひまわり」でもなく

 

 

空と水の青色を映した

「わすれなぐさ」を。

 

 

どうせ忘れるくらいなら

眺めるだけじゃなくて

自分の身体に 

その感覚を残せるように。

 

 

 

あの日から 二週間と少し。

運命的にめぐってきたご縁を 

慎重に慎重に結んで

家に持ち帰ってきた

もう一茎の ”形見”が、、、

 

 

 

これ

 

 

 

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わすれな草の色をまとった 

世界に1本のテレキャスター

 

 

 

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http://www.kabegami.com/shashin-bu/Spphotocontent/dl/id/PHOT00000000001040E0

 

 

 

あのステージに降り注いだ

はじまりの青の ひとかけらを

 

嘘とホントが交差する音色を

 

目一杯 歪めた音に  

ディレイもかけて

 

せめて

ワンフレーズだけでも 

自分の手に。

 

 

 

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SET LIST

01.嘘
02.ダイアローグ・モノローグ
03.花咲きポプラ
04.ROUTES
05.鱗(うろこ)
06.美しい穢れ *弾き語り
07.恋はやさし野辺の花よ *弾き語り
08.休日
09.Fast Life
10.ディープブルー
11.水彩の月
12.デイドリーマー
13.Q & A
14.グッバイアイザック
15.あそぶおとな
16.スミレ
17.ひまわりの約束
18.Sally
[ENCORE]
19.聖なる夜の贈り物
20.トラノコ
21.僕らをつなぐもの *弾き語り

 

(Yahoo:【インタビュー】秦基博の目に映る『青の光景』は、”最も美しい青”なのか 

(SPICE:秦 基博がその歌で東京国際フォーラムに描き出した“青の光景”

(エンタメステーション:【LIVE SHUTTLE】 秦 基博 @東京国際フォーラム 2016.6.4

 

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追記1

わすれなぐさ、といえば

実は真っ先に思い浮かぶのが

ドイツ語の詩「Vergißmeinnicht」を訳した

上田敏訳の『海潮音』の名調子。

 

「わすれなぐさ」 ヰルヘルム・アレント

 

流れの岸の一本(ひともと)は、
御空(みそら)の色の水浅葱(みずあさぎ)、
波、ことごとく、口づけし
はた、ことごとく、忘れゆく。

 

訳詩の原詩はひらがなだけなのですが

意味重視ということで、漢字まじりにしてみました。

なんの偶然か、 

はた」が出てくることを思い出して

一人で大喜び。

こういう、どうでもいい偶然が大好物なのです。

だからどうした、っていうレベルのね(^^)。

それにしても、うつくしいリズムだ・・・。

 

ちなみに、

谷川さんの詩「青」の前半が掲載されている詩画集はこれ(私物)。

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後半も全部載っているのは、こちらの選集です。(Kindle版あり)

 

 

 

追記2.

こちらが「青」なら、4日まえのアレは紛れもなく「赤」!

 

 スーパーマーズが地上に降りたった

PLANETROX決勝戦(しかも火曜日)、

プレイヤーに触れられそうなほど近い

オールスタンディングの最前列!!!

 

滾る熱気で赤く燃え立ったライブと

「青の光景」ツアーファイナルがあまりに対照的で 

どちらも消化するまでに時間がかかりすぎました(笑)

 

楽しすぎた赤の光景

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2週間後にようやく書いたライブの記事はこちら