重箱の隅

好きなことだけ。

『ギターコードを覚える方法とほんの少しの理論』

いちむらまさき 著 (2015.06.19) 
ギターコードを覚える方法 と ほんの少しの理論
リットーミュージック


通称「赤本」では主に左手(音を自由に選べるようになる手クセ)”を、「青本」では主に右手(カッティング:リズム強化)”を刺激してきたいちむら氏が、爽やかな「水色/空色」をイメージカラーとする本書で刺激するのは”アタマ”。といっても、無味乾燥な暗記や記憶ではなく、理論30%、7つのルールによって600個のコードを導いたり、コードの進行を思い描くことのできる、やわらかな「アタマ」です。

ページを開いて早々に、その朗らかな人柄が伝わるような語呂合わせ、「開放弦は”家で地ビール”」からはじまって、いちむら氏の実践的コード理論の発端にある魔法のことば「こんばんみ」、厳選された「弦選」による臨機応変のプレイ、番外編では、循環コードの”お散歩コース”・・・etc。

最低限の知識を定着させ、そこから発展させて、実践につなげるための工夫が、これでもかというほど凝らされています。厳選された理論をどこまでもわかりやすく語る文体はもちろん、直感的にイメージできるグラフィックや、見やすいページ構成、目から鱗の含蓄に富んだコラム、章末の「まとめ」と「おさらいテスト」。緩急に飛んだ構成で、まったく飽きることなく最後まで読み進めてしまいました。

この本で”アタマ(と音感)”を育てていけば、自分でコードを導き出すのはもちろん、いずれは「自分でコード進行を予測したり」、「自分なりのコード進行を考える」ことが可能になるかもしれない。

ギターを愛するすべての人が、それぞれの「一歩」を踏み出すために必要なものが、この本にはつまっています。

音楽の扉の一歩前で立ち止まっているギター未経験者が、「一歩前」に進み出てその扉を開けるために。
扉をあけて踏み出したものの、難しさに立ち止まった初心者が、再び思い新たに「一歩前」へ踏み出すために。
自分には必要ないと道の先を行く上級者が、悩める者の前に「一歩」あゆみ寄って、とっておきのコツを教えてあげるために。

赤本」でパッションに溢れた演奏を、「青本」でクールなリズムを、「白(×)」でロディーを弾くための秘訣を伝授してきた著者の新刊が、”濃淡に富んだ水色”に彩られているのも、理由があるような気がしてなりません。音楽という「川の流れ」にとって、コードは”源流”であり”深い泉”のようなものだから。そして水面に映る高くて遠い「空」の色だから。

エピローグでいちむら氏が次の目標に掲げているのは、音楽という「目に見えない絵」の素敵さを裏付ける、「音の面白さ」に焦点をあてた本の執筆です。
「音と音の関係性」を知ることで、譜面なしで曲が弾けるようになるという、その画期的な次回作の完成を、今から熱望してやみません。

そして、内容はもちろん、イメージカラーも 密かに楽しみにしている私です。